心ともなく頭に浮かぶ。「猫もしゃくしも」ではじまる例文だ。インターネットで検索したら、おもしろいのが目に入った。「電車に乗ると、猫もしゃくしもスマホをいじっている」(参照)。ここでは否定的な面で用いられているが、正直なところ現実そのものか。自分にとっては、とってもうらやましい。「それはなぜか」って、電話のほか、ほぼほぼパソコンと同等の機能がついており、便利すぎると思う。1990年代、ポケットベルが流行した。ポケットに入るくらいの通信機器を用いて、電波で相手に合図を送る仕組みで連絡手段となっている。会話やメールもできない。けれど、21世紀への懸け橋をつくったのかもしれない。
はじめて、ディスクトップパソコンを手にしたのは、ウィンドウズ95が出たときだ。IBM社から販売された、家庭・個人ユーザー向けの「Aptiva(アプティバ)
770 2168-S50」。「パソコンでどんなことが自分にできるのだろうか」。とても心が躍っていた。周辺機器もそろえる。インクジェットプリンターは、20万円台のもので、よりきれいなプリントアウトを求めた。パソコンの使い方がよく分からない。OS(オペレーティングシステム)というプログラムについて、操作する勉強が必要だと直感。大金をかけたけれど、早くもつまずく。ホコリがかかってはまずいと思い、パソコンやプリンターを風呂敷で覆う。「三種の神器」の冷蔵庫・洗濯機に次ぐ、白黒テレビと等しいかもと思った。そのままにしておき、どのくらい時間が過ぎたか。インクカートリッジの性能をうかがわせる。まだ一度も使っていないプリンターは、インクが固くなってしまい、プリントができなくなった。「さてどうする」。焦りはあったがある日、市内の産業団地をクルマで通りかかり、コンピューター専門学校の存在を知った。
校内の受付窓口で尋ねてみる。「はじめてパソコンを買ったのですが、やり方が分からないので困っています」。そしたら、奥の方から教員らしい男性が近づいてきた。「まあまあ、中へお入りください」。言われた通りにする。「それは誰でも同じですよ」。前置きをして回答をしてくれた。「やっているうちに分かってきます」。このひと言葉で、もやもやした気が晴れる。いまも変わりはないが、いじり回すとプログラムがおかしくなり、最悪の場合はOSが起動不可能になる。その一方で、付属品のリカバリCDを命綱だと心得、パソコンをもてあそぶ。結果は第一関門突破。以降、ウィンドウズ・ユーザーとなり続けている。
養護学校卒業後の昭和54年。荒海の社会で自分にできるこ とは何か。答えは和文タイピストだった。業務用電動和文タイプライターを個人で購入して、印刷会社から下請けの仕事をもらう。自室で朝から晩まで機械に向かい、用紙をタイプライターのローラーにセットして、手書きの原稿通りに文字を活字に変えていく。誤字が見つかれば、修正液を使い同じ位置に正しい文字を打ち込む。とりわけ、専門用語が豊富な医師が書いた原稿には手を焼いた。下請けの収入から、電動和文タイプライターの元は取れたか。微妙な感じだ。アルバイトのような身分でも、仕事ができることには誇りを持つ。もうそのころは、ワードプロセッサーが普及していた。我もキーボードに触れる。時の流れに逆らうことはできなかった。
ホームページを公開したのは10数年前。パソコンに慣れてきて、インターネットの便利さを知る。家に居ながら、コミュニケーションの手段が分かった。まずは作成にトライ。いろんな人に閲覧をしてもらう。そこには忘れられない出会いや言動に考え込むこともあり、充実感に満たされていた。いまとなっては更新を怠り、アクセスも全くなく埋もれたホームページが哀れでならない。
ポケットベルが進化したのは、電子メールではないか。知り合い同士が連絡を取り合う。インターネットで出会った場合も、手紙のようなやり取りが可能だ。有料・フリーアカウントを一つずつ持っているが、無料の方は登録の手続きで(第三者の不正ログイン、なりすまし防止ため)2段階認証を経なければならず、ここでストップしてしまう。多くはスマートフォンの事前準備をする必要があり、身体障害ため使用が難しい自分にはお手上げである。だれでも利用しやすい、無料メール登録の門戸開放を願いたい。この世界では手軽なブログやフェイスブックも存在する。中高年の利用が多い実名登録制のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、前者は覚え書き・論評などを書き記するもので、個人の日記などをウェブページにアップロードが可能。両方ともすぐにはじめられそうだ。が、まだ手をこすってしまう。
何はともあれ自発的に試すべきだ。訪問リハビリの先生や関係各位の協力を得て、自分のありさまを動画にまとめ、ユーチューブサイトに流してみたい。訪問者がいないホームページではなく、一人のアクセスでも意味のある情報を発信したいと思う。一歩ずつの前進を大切にしたい。爆発的なインターネットの広がりは、スマートフォンの相性効果が多大である。今後、どんな展開となるか想像にも困難を極める。つぎは猫じゃなく、一段ランク体重を減らし「ネズミもしゃくしも」の、新例文が誕生すると考えるのは愚かであろうか。
令和5年秋たけなわ、ノートパソコンの前で拙い文章入力に励む。ディスプレイに表示されるスクリーンキーボードを見ながら、トラックボールを使い、ポインターで合わせ文字をクリックしていく。「何だ。そのタイプの仕方、亀より遅い…」。このシーンに、自分は何も思うことはない。電動和文タイプライターに向かい、原稿を活字に変える作業を思い出しながら、ひたむきにやっていこう。これで締めようとしたが、ちょっと待った。通信回線が混むと、閲覧が途切れてしまうほか、パソコン自体もスムーズな操作に支障をきたすこともありそう。パケット(通信データをある長さに切り、制御情報にする仕組みこと)の数が減少ため、再試行を繰り返し、回線が切れてしまうように見えるという。これら備え、ポケット型ワンフェイ・モバイルワンフェイに関する情報を習得したい。あとでよかったと、胸を下ろせたら幸いだ。読者のみなさん、次回の拙文をお楽しみに…。
2023/10/28
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